新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束を願う中、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能(AI)など、「第4次産業革命」とも呼ばれる世界的な大変革によって、必要なものを必要なだけ供給できる生産体制や物流体制、そして販売体制を安全かつ効率的に維持・発展させることができるようになり、それに伴う労働力不足問題、エネルギー問題、地球環境問題等、様々な問題の解決につながることが期待されている。
そのためには、より広い視野でものごとを捉えることができるグローバル人材や、イノベーションを引き起こすことのできる人材の育成が必要になってくる。
言い換えると、将来を見据えた行動力のある人材や、社会の変化に柔軟に対応できる、個性的で創造力の豊かな人材の育成が極めて重要であると同時に、技術者に対する倫理教育の実践、地方創生を支える人材の育成を進めることも必要であり、多くの生徒が地域の企業に就職する工業系高校の果たすべき役割はますます大きくなっている。
また、昨年度提出された岡山県産業教育審議会建議では、工業教育の在り方について、より一層の特色ある教育課程の編成や学校の魅力づくりなど、将来の地域産業を担う有為な人材を育成する学校教育のさらなる充実が求められている。
このような背景を受け、工業教育においては、新しい時代の教育を一層推進するため、次の二点を重点とする。
第一に、本年度から年次進行で実施される新学習指導要領の方向性を踏まえ、基礎学力の定着や技術・技能の向上を図りつつ、主体的・対話的で深い学びを重視する中で、STEAM教育や課題解決型学習等を展開することにより、思考力・判断力・表現力等を育成し、急激に変化する社会に主体的に対応し生き抜く力の体得、目標に向かって粘り強く取り組む力、並びに自己教育力の育成に努めることが必要である。さらに、学校内だけでなく、家庭等でも学ぶ機会を保障すると共に、個別最適化された学びが提供できるよう、遠隔授業やその教材など、ICTを活用した教育を推進することも必要である。
第二に、人格形成期にある生徒に対し、情報化社会が一層進展する中、特に基本的生活習慣の確立や道徳心・公共心の育成等、将来の社会人としての基本的マナーや情報モラルなどを十分身に付けさせる生徒指導を推進する。また、望ましい勤労観・職業観を育み、将来にわたって自己実現が図れるような進路指導・キャリア教育を一層推進する。さらに、自分の強みを自覚し、他者を尊重して多様な人たちと協働しながら社会の変化を乗り越え、21世紀を担い、SDGsの視点に立った持続可能な社会を築くことのできる調和のとれた健全な人格の形成に努める必要がある。
このため、本年度の事業を次のように計画し、推進する。
記
(1)ものづくり力の育成
①「高校生のものづくり技能取得支援事業」、「若年技能者人材育成支援等事業」を積極的に推進し、各校の資格取得・検定合格を奨励する。(ジュニアマイスター1000人創出を継続)
②各種の成績上位者や高度な資格取得者・検定合格者を顕彰する。
③「高校生ものづくりコンテスト県大会」を充実させ、各校のものづくり教育を支援する。
④「令和4年度高校生ものづくりコンテスト中国地区大会」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。また、中国地区大会・全国大会等への参加を助成する。
⑤「第30回全国高等学校ロボット競技大会岡山県予選会」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑥「2023高校生テクノフォーラム」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑦各部会が開催する「ものづくり」に係る発表会等を支援する。
⑧「中国地区第7回高校生溶接技術〈圧力容器〉競技会」を開催し、活動を支援する。
⑨「ものづくりコンテスト全国大会溶接部門岡山大会」を開催し、活動を支援する。
⑩来年度の全国高等学校産業教育フェア福井大会へ出品する展示物の製作を支援する。
(2)教員の指導力の向上
①「高校生のものづくり技能取得支援事業」の効果的な活用や、スマート専門高校事業で導入される装置の実技講習会等の開催により、「ものづくり力」育成のための指導力向上を支援する。
②専門教育における技術・技能の伝承を図るため、初任者等の研修を推進する。
③STEAM教育や課題解決型学習を含めた研修会等の開催や参加を助成し、資質向上を支援する。
④「岡山県産学官連携による教員研修」を推進する。
⑤機関誌「工業教育」第68号を発行する。
(3)進路保障の充実
①時代の要請や産業界のニーズに対応した教育内容について具体的に研究する。
②キャリア教育の視点に立った進路指導を充実するため、具体的に研究する。
③大学への推薦入試制度の拡充を関係機関に働きかけるとともに、進学希望者の学力向上策について研究する。併せて教員を目指す工業系高校生を支援する。
④「岡山県産学官連携による教員研修」等によって、地域産業界との連携をより一層緊密にし、各校の進路指導を支援する。
⑤インターンシップや高大連携事業の取組を支援する。
(4)広報活動の充実
①中学生に対して分かりやすい情報発信を行うとともに、オープンスクール等の一層の充実を図る。
②「第30回全国高等学校ロボット競技大会」への積極的な取組等により、本県工業教育の内容を県内外に効果的に発信する。
③会員校及び工業教育協会の取組を関係各方面と連携を図りながら進めるとともに、その活動状況を各種の報道やホームページ等を通じて効果的に広報する。
④小中学校・高等学校間及び高等学校・大学等との連携を緊密にして、工業教育への理解と認識を深める。
⑤各部会の学習成果発表会等で情報を積極的に発信するとともに、生徒のプレゼンテーション能力の向上を図る。
(5)将来を見据えた工業教育の充実
①工業教育基本問題研究委員会の活動を中心に、新学習指導要領に対応した中・長期的な視野に立った工業教育の振興・充実を図る。
②GIGAスクール構想の実現に向けた教職員のICT活用指導力向上を目指す。