令和5年度事業計画

 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた3年間で、社会ではオンライン会議や在宅勤務等の働き方の変化とともに、教育現場でもGIGAスクール構想により、生徒への一人一台端末が導入され、教育の情報化が一気に進んだ。一方、原油価格の高騰や半導体不足等による産業界への影響もあり、世界的に先行き不透明な状況に陥っている。
 そのような中、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能(AI)など、Society5.0時代の世界的な大変革による労働力不足問題、エネルギー問題、地球環境問題等、様々な問題の解決が期待されている。
 また、一昨年度提出された岡山県産業教育審議会建議では、工業教育の在り方について、技術の高度化、情報技術の発展、地域や社会の健全で持続的な発展等に対応するために、最先端の技術を駆使し、創造力を生かして付加価値の高い、安全で安心なものを製作する力を育成することが求められている。
 これらに対応するためには、将来を見据えた行動力のある人材や、社会の変化に柔軟に対応できる、創造力の豊かな人材の育成が極めて重要であると同時に、技術者に対する倫理教育の実践、地方創生を支える人材の育成を進めることも必要であり、多くの生徒が地域の企業に就職する工業系高校の果たすべき役割はますます大きくなっている。
 このような背景を受け、工業教育においては、新しい時代の教育を一層推進するため、次の二点を重点事項とする。
第一に、昨年度から年次進行で実施されている新学習指導要領の方向性を踏まえ、基礎学力の定着や技術・技能の向上を図りつつ、主体的・対話的で深い学びを重視する中で、STEAM教育や課題解決型学習等を展開することにより、思考力・判断力・表現力等を育成し、急激に変化する社会に主体的に対応し生き抜く力の体得、目標に向かって粘り強く取り組む力、並びに自己教育力の育成に努める必要がある。また、学校内だけでなく、家庭等でも学ぶ機会を保障すると共に、個別最適化された学びが提供できるよう、ICTを有効に活用した教育を推進することも必要である。
第二に、人格形成期にある生徒に対し、情報化社会が一層進展する中、特に基本的生活習慣の確立や道徳心・公共心の育成等、将来の社会人としての基本的マナーや情報モラルなどを十分身に付けさせる人間教育を推進するとともに、望ましい勤労観・職業観を育み、将来にわたって自己実現が図れるような進路指導・キャリア教育を一層推進する。
 さらに、自分の強みを自覚し、他者を尊重して、多様な価値観を持つ人たちと協働しながら社会の変化を乗り越え、21世紀を担い、SDGsの視点に立った持続可能な社会を築くことのできる調和のとれた健全な人格の形成に努める必要がある。
 このため、本年度の事業を次のように計画し、推進する。

(1)ものづくり力の育成

①「高校生のものづくり技能取得支援事業」、「若年技能者人材育成支援等事業」を積極的に推進し、各校の資格取得・検定合格を奨励する。(ジュニアマイスター1000人創出を継続)
②各種の成績上位者や高度な資格取得者・検定合格者を顕彰する。
③「高校生ものづくりコンテスト県大会」を充実させ、各校のものづくり教育を支援する。併せて、中国地区大会・全国大会等への派遣を支援する。
④「令和5年度高校生ものづくりコンテスト中国地区大会(自動車整備部門)」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑤「令和5年度高校生ものづくりコンテスト中国地区大会(溶接作業部門)兼中国地区第8回高校生溶接技術〈圧力容器〉競技会」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑥「第31回全国高等学校ロボット競技大会岡山県予選会」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑦「2024高校生テクノフォーラム」を開催し、生徒の積極的な活動を支援する。
⑧各部会が開催する「ものづくり」に係る発表会等を支援する。
⑨本年度開催される全国高等学校産業教育フェア福井大会へ出品する展示物の運搬費等を補助する。

(2)教員の指導力の向上

①「高校生のものづくり技能取得支援事業」の効果的な活用や、スマート専門高校事業で導入された装置の活用研修会等を開催し、「ものづくり力」育成のための指導力の向上を図る。
②「教職2年目及び3年目経験者研修会」を開催し、工業教育における技術・技能の伝承を図る。
③STEAM教育や課題解決型学習の研修会等の開催や参加を助成し、資質向上を推進する。
④「岡山県産学官連携による教員研修」を推進する。
⑤機関誌「工業教育」第69号を発行する。

(3)進路保障の充実

①時代の要請や産業界のニーズに対応した教育内容について、具体的に研究する。
②キャリア教育の視点に立った進路指導の充実を図るため、具体的に研究する。
③大学への推薦入試制度の拡充を関係機関に働きかけるとともに、進学希望者の学力向上策について研究する。併せて教員を目指す工業系高校生を支援する。
④「岡山県産学官連携による教員研修」等によって、地域産業界との連携をより一層緊密にし、各校の進路指導を支援する。
⑤インターンシップや高大連携事業の取組を支援する。

(4)広報活動の充実

①会員校及び工業教育協会の取組を関係各方面と連携を図りながら進めるとともに、その活動状況を各種の報道やホームページ等を通じて効果的に広報する。
②各部会の学習成果発表会等で情報を積極的に発信するとともに、生徒のプレゼンテーション能力の向上を図る。
③小中学校・高等学校間及び高等学校・大学等との連携を緊密にして、工業教育への理解と認識を深める。特に、高大連携では「工業高校ツアー」等の取組により、教員を目指す工業系大学生を増やす。

(5)将来を見据えた工業教育の充実

①工業教育基本問題研究委員会の活動を中心に、SDGs及び新学習指導要領に対応した中・長期的な視野に立った工業教育の振興・充実を図る。
②「教育研究委員会」にICT担当者部会を正式に立ち上げ、GIGAスクール構想の実現に向けた教職員のICT活用指導力向上を推進する。

 記